人気ブログランキング | 話題のタグを見る

小さな出版社エディマンからのお知らせ


by ediman_tokyo
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために―野宿の人びととともに歩んだ20年』(稲葉剛 著、武盾一郎 装画、エディマン発行、新宿書房発売)プレミアムバージョンが完成しました。
価格は、本体1700円+消費税です。
早々にお問い合わせをいただいております。ありがとうございます!

購入ページを設けましたので、こちらよりお申し込みください。

http://edimantokyo.com/books/9784880084534/

よろしくお願いいたします!
# by ediman_tokyo | 2014-12-20 13:33
明日は衆議院議員選挙です。みなさま万難を排して投票に行こうね。

19日に完成予定の『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(稲葉剛著、エディマン発行、新宿書房発売)ですが、おそらく今ごろ、すべての印刷を終え製本過程に入っているものだと思います。

今回は、本書の装画を描いてくださった、武盾一郎(たけ・じゅんいちろう)さんについてご紹介したいと思います。
本書を企画し目次案が固まってきたとき、頭に浮かんだのは新宿ダンボール村のダンボールハウスを彩った絵の群れでした。新宿駅西口のダンボール村は、東京都による強制撤去とその後の火災により消滅してしまうのですが、ダンボール絵画もまた、残ることなく消失しました。
そのダンボール絵画の制作者の中心人物が武さんでした。

新宿西口からダンボールハウスが消えておよそ10年がたった2005年、「ダンボールハウス絵画研究会」というものがはじまり、そこに参加したことが、ぼくが武さんと知り合うきっかけとなりました。
その研究会でぼくは、彼らがじつにたくさんの作品をダンボール村に描いてきたこと、制作当時の彼らは美術予備校の学生だったこと、絵を描いているときに背後を通る通行人からの暴力を恐れリュックを背負って絵を描いていたこと、金銭的問題やダンボールという性質の問題からペンキという画材を選んだことなど、当事者でしか知りえないじつに多くのことを知りました。また、この研究会を通じて、稲葉剛さんや写真家・迫川尚子さん(ベルクの副店長でもあります)ら、当時の新宿で活動してきた方々と知己をえることもできました。

研究会終了後も折りにふれ、武さんからは当時のダンボール村の雰囲気について聞いてきました。
本書の著者である稲葉剛さんが話題にのぼることもしばしばでした。拝見した当時の制作ノートにはイラストと吹き出しつきで稲葉さんが登場したり、なんていうこともありました。

本書の造本を宗利淳一さんにお願いにうかがった際、だれか装画を描ける人はいないかと相談を受けました。真っ先に武さんが頭に浮かびました。
装画のお願いを兼ねた打ち合わせの席、武さんはこのようにおっしゃいました。
「『鵺(ぬえ)』って、妖怪だよね。妖怪の正体について、水木しげるさんは『音』だと言ってるんだよね。稲葉さんが『鵺』? おもしろそうだね」
それから約3か月。武さんは稲葉さんの執筆原稿に一度も目を通すことなく描きあげました。「新宿鵺」と題された絵を、上尾駅のサイゼリヤで受け取ったとき、武さんは次のようにおっしゃいました。
「白黒反転、画像加工、どう使ってもかまいません」

絵を大事にかかえ、急いで帰宅して、慎重に梱包を解きます。
そこ現れたのは、身震いするほど迫力のある〈作品〉でした。黒いボールペンのみで描かれた途方もない線の渦のなかに、よく見るとさまざまな動物がビル群がそして鵺が描かれていたのです。それはアートでした。
しかしぼくの脳裏には不安がありました。そう。この作品をどうやって本の装丁に落とし込むことができるのだろう、という不安、そして期待です。
絵を見た宗利さんからは、すかさずスキャン方法などについて細かな指示が飛んできました。凸撮りの画像を手配し、絵の細やかな線と黒インキの迫力を保ちます。
さて、どうやってタイトルを印刷するか。しかも本のタイトルは『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』と、ひじょうに長い。どうやっても絵にかぶさる。「鵺」は生きるのか!? 
正直この時点で、ぼくはかなり動揺していました。アーティストとデザイナーの力がぶつかり合うのですから、どちらかがどちらかを殺してしまうことなんておおいにありえますから。

結論から申しますと、宗利さんは「鵺」にもうひとつの命を吹き込んでデザインしてくれました。
見る立場や見る者によって異なる姿を見せる「鵺」。タイトルが入って「もうひとつの鵺」が立ち現れたように思います。
終わってみれば、こうするのがもっともよかったと思えるような仕上がりでした。

というわけで、どうぞみなさん、本書の隅々までじっくり味わってください。

武さん、すてきな絵をありがとうございました。
『鵺(ぬえ)の鳴く夜を正しく恐れるために』その2_a0108850_17263575.jpg

# by ediman_tokyo | 2014-12-13 17:27 | 新刊案内
ごぶさたしております。

2014年も年の瀬が迫りました。
今年も平穏無事に終わろうとしていますが、ちょっと待ったあああ!!!!
久しく新刊を出していませんでしたが、この年末、待望の新刊を発行します。
タイトルは『鵺(ぬえ)の鳴く夜を正しく恐れるために――野宿の人びととともに歩んだ20年』。
著者は、野宿者支援・生活保護問題で長らく活動を続けている稲葉剛さんです。
192ページ、定価は1700円(税別)、エディマン発行、新宿書房発売です。

見本は12月19日にできる予定です。
全国の書店さんに年内に配本することは微妙な状況ですが、なんとしてでも今年中に出したかった理由があります。
ひとつは、なんといっても稲葉さんが野宿者支援の活動にかかわるようになって、今年が20年目の節目だということです。もうひとつは、役所など公的機関は年末年始はお休みとなるので、野宿の人たちはたいへんな苦労をされます。本書の出版により、わずかでもそのような実情がお伝えできるかもしれないと考えたからです。

稲葉剛さんについてはご存知の方も多いかと思います。近年では岩波新書『生活保護』という著書が有名です。稲葉さんは、大学院生であった1994年から新宿西口地下道のダンボール村で野宿者支援に取り組みはじめました。当時、新宿駅を利用していた方にはなつかしく、かつ印象的な風景だと思うのですが、当時の新宿駅西口、とくだん新都庁へと続く地下道は両脇にダンボールハウスが並び、多くの野宿者がその周辺で生活していました。その数は300以上とも500近くとも言われています。当時を知らない人には驚きかもしれませんね。
本書の出発の一つはこのダンボール村にあります。そこに暮らす人びとのかかえる問題に向き合った著者や仲間たちの活動の記録でもあり、そこに暮らす人びととの交流史といえるかもしれません。
あそこで暮らしていた人たちはどこへ行ったのか。ぜひ、本書を開いていただければと思います。

タイトルは、巻頭のエッセイからとりました。「鵺」というのは『平家物語』などに登場する妖怪で、顔はサル、胴体はタヌキ、手足はトラ、尾はヘビで、「ひょー、ひょー」と鳴いたそうです。見る人によって異なる姿を見せる対象に、社会はどのように対処できるのでしょうか。また、なぜ、同じものがこうまでも見るものによって変わってしまうのか。ぼく自身、おおいに考えさせられましたので、これを(わかりにくいと指摘がありましたが)タイトルにしました。

ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。
『鵺(ぬえ)の鳴く夜を正しく恐れるために』その1_a0108850_1630394.jpg

# by ediman_tokyo | 2014-12-11 16:30

マルケスと黒澤明

すっかりさぼりんこ。

東日本大震災以後、脱・原発をめぐる動きが活発です。
各地で大規模なものからささやかなものまで、デモやパレードが行なわれていますね。
自分の思いや主張を伝えるだけでなく、ただその場にいるだけで意思表示になるデモが、このように盛んになる。
自分たちの日常が少し変わったような気がします。

そういえば『ガルシア・マルケスひとつ話』には、黒澤明とマルケスの対談をめぐるお話が掲載されているのでした。
核保有に積極的なマルケス(意外?)と、断固として核を認めない黒澤明。
黒澤明を敬してやまないマルケスは、たじたじと。。。(つづきは書籍をお読みください)

脱・原発も、その根っこは「核」です。
忌野清志郎も言っていました。
「反原発の歌じゃなくて、反核の歌じゃないか」って。

3人の子どもをもつ身としては、どのように現在から先を生きていくべきか、とても考えさせられます。
# by ediman_tokyo | 2011-09-16 15:05

愛は人を馬鹿にする

『ガルシア・マルケスひとつ話』が『映画秘宝』(洋泉社)7月号で紹介されました。
紹介してくださったのは柳下毅一郎さん。
今回のブログのタイトルは、その書評記事の上の句からいただきました。
本書の特徴をうまく紹介してくださり、筆者については、
「しまいに『百年の孤独』の最良の読者としてガルシア=マルケスが名を挙げたソビエトの老婆にならい、『百年の孤独』の原文全文を写経よろしく書き写してみたりする。翻訳者にとっては悪夢としかいいようのない読者、途方もない馬鹿と言わずしてなんと言おう。」
とまとめてくださいました。
愛は人を馬鹿にする、なるほど! しかし馬鹿だけではおもしろくないのは、さすがは柳下さんもご承知。タイトルの下の句は
「しかし馬鹿だからこそ達成できる偉業もある!」

また、造本につきましても言及していただきました。
造本者は宗利淳一さん。
カバーにあしらっていただいた黄色い薔薇をうまく使っていただきました。
思えばお金がかかったなあ。。。
柳下氏いわく「たぶん経済の論理から言えば、また1冊の本にこんなに手間暇と金をかけてしまうのは馬鹿げたことなのだろう」。
そうであった、ぼくもまた馬鹿者の長征(マーチ)に加わっていたのであった!

さて、うれしいご案内があります。
『新潮』 2009年7月号(2009/06/06発売)に著者の書肆マコンドさんの文章が掲載されます。
「新潮」というコーナーです。
本書を読んでくださった方にとってはおまけのような「もうひとつ話」となることでしょう。
本書を購入しようか迷っている方は『新潮』を読んでみてください。
『ガルシア・マルケスひとつ話』は、こんな話がてんこもりなのです。
# by ediman_tokyo | 2009-06-05 17:24 | 書評